東京理科大学、セレッソ大阪、ヤンマーホールディングスの3者が、金融工学のリアルオプション理論を応用し、「移籍期間」や「契約解除条項」といったサッカー特有の制度を考慮した選手価値評価モデルを共同開発しました。選手の成長可能性、移籍機会の価値、契約解除条項の影響、クラブの放出判断の4項目を統合的に評価するもので、契約解除条項の有無によって選手価値が大きく変わることを実証しています。
出典:朝日新聞「東京理科大・セレッソ大阪・ヤンマー、金融工学を応用したサッカー選手価値評価モデルを開発」(2026年9月17日)
金融市場のオプション価格理論を、スポーツの選手評価というまったく異なる領域に持ち込んだ事例です。
成立した理由は、3者の持ち物が噛み合っているからです。大学は金融工学とデータサイエンスの理論、クラブは現場のデータと制度の実務知識、事業会社は評価を経営判断に落とす視点。理論だけでも、データだけでも、このモデルは作れません。
学ぶべきは掛け合わせの発想そのものです。自社に「重要だが数値化しづらい価値」はないでしょうか。人材の将来性、設備を保有し続ける価値、撤退せずに事業を続ける選択肢の価値——いずれも現場では感覚的に判断されており、社内で合意を取るたびに議論が振り出しに戻る類のものです。こうした価値には、既に理論的な枠組みが別の分野で確立されている場合があります。
重要なのは、この種の連携は「自社の分野の研究者」を探しても見つからないということです。必要なのはサッカーの専門家ではなく、評価理論の専門家でした。相手を業種や分野で絞り込むと、候補から外れてしまいます。
大学の側から見れば、既存理論の応用先を広げることが新しい共同研究の入口になることを示す事例です。新しい理論を作らなくても、連携は始まります。
この研究は論文としても結実しています。東京理科大学の後藤允准教授(総合研究院スポーツサイエンス研究部門長)を研究代表者とする成果が、2026年6月に国際学術誌『Journal of Quantitative Analysis in Sports』に掲載されました。企業との共同研究が、そのまま研究者の業績になっている。 連携を打診する側にとって、この形が示せるかどうかは相手の判断を大きく左右します。
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