メガネ920万人分のデータが、国際的な眼科学誌に載るまで

何があったか

メガネブランドのJINSと大阪大学大学院医学系研究科の共同研究論文が、米国視覚眼科学会の機関誌「Investigative Ophthalmology & Visual Science(IOVS)」に掲載されました。JINSが全国47都道府県434店舗で取得した匿名化データ(度数情報と購入者属性)を提供し、大阪大学の川崎良教授・高静花准教授が研究を主導、西田幸二教授が監修。近視研究は6〜35歳の約452万人、乱視研究は6〜89歳の約920万人を対象とした大規模な疫学研究です。近視は男性30歳・女性29歳頃まで進行すること、10歳未満の1.3%が強度近視であることなどが示されました。

出典:PR TIMES「JINSと大阪大学大学院医学系研究科の共同研究論文がIOVSに掲載」(2026年9月4日)

解説

企業が共同研究に出せるものは、研究費だけではありません。この事例で決定的だったのは事業の中で自然に溜まっていたデータです。

450万人、920万人という規模は、大学が研究のために集められる数ではありません。疫学研究は対象者数がそのまま結論の信頼度を決めるため、ここは企業側しか持ち得ない資産でした。一方で、そのデータを研究として設計し、解析し、査読に耐える形にまとめるのは大学の仕事です。どちらが欠けても論文にはなりません。

企業にとっての見返りは明快です。「近視は30歳頃まで進行する」という知見が国際誌に載れば、それは自社の商品説明に使える科学的裏付けになります。広告表現としての主張と、査読を通った知見とでは、受け止められ方がまったく違います。

研究者の側から見ても、この事例は意味を持ちます。企業との共同研究は業績にならないという懸念は根強くありますが、ここでは国際的な学術誌への掲載という形で結実しました。連携を打診する際、前例を示せること自体が説得材料になるのではないでしょうか。

ひとつ留保もあります。このデータの母集団はメガネ購入者であり、住民を無作為に抽出したものではありません。それでも450万人・920万人という規模は従来の研究では得られないもので、代表性の限界と引き換えに規模を得た研究だと言えます。

JINSと大阪大学大学院医学系研究科の共同研究論文が、眼科学・視覚科学誌「IOVS」に掲載
近視・乱視それぞれの論文概要と、年齢別の進行速度などの知見を解説。
大阪大学 ResOU / 2026年9月3日
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